自衛隊の人間関係

嫌われると逃げ場がないので終わり

オレがいた普通科連隊は5中隊あった。1中隊が大体150人ぐらいの編成である。日頃の訓練はこの中隊ごとに行う。いわば中隊は「一家」だ。中隊の下に20人ほどの小隊がある。オレの場合は迫撃砲小隊だった。小隊は言わば、「家族」だ。結びつきは特に強い。ほかの小隊に鬱陶しい奴がいても逃げられるが、同じ小隊にいるとそれも不可能。なので小隊内の人間関係には特に気をつけなくてはいけない。
オレは特に仕事がデキたわけでもないし、他人から見て面白い人間でもなかったと思うが、特に好かれも嫌われもしない普通の隊員だったと思う。
しかし、上官や先輩から嫌われると過酷な日々を送ることになる。

いじめはあったか?と聞かれると微妙なところ。オレの周囲で暴力を振るわれている奴は意外にもいなかった。昔は何かあったらすぐに殴られていたらしいが、そういう風潮はなかった。あと、金をとられたりすることもなかった。
しかし、先輩による後輩いじりは、やや度を越していたと思う。
そして、さらに性格の悪い陸曹に睨まれると大変である。事あるごとに「お前なんか今すぐ辞めろ」と言われている同期がいたが気の毒だった。

オレはその後、一般の会社でサラリーマンもやったが、それに比べて良くも悪くも職場の人間関係は濃すぎる。仕事だけでなく生活も同じだし、人間関係でつまずくと逃げ場がない。

上から嫌われないためには、まず仕事がデキる事だ。仕事がデキると、先輩も認めてくれるし、邪険に扱われることもない。また、仕事がデキなくても、愛嬌があれば生き残れる。同期でどうしようもないヘタレがいたが、愛嬌があったので皆から可愛がられていた。それ故、先輩からイジられることも多く、大変そうだったが、まんざらでもなさそうだった。
仕事もデキず、愛嬌もないなら、何にせよ頑張っている姿勢を見せ続けることだ。オレはそれでギリギリ生き残った(まあ、半分は頑張ってるフリだったが)。
それすら出来ない奴は残念ながら辛い思いをしたと思う。

色々書いたが、もちろん素晴らしい陸曹、陸士の先輩も大勢いた。そして、苦労を共にした同期とは、時として衝突したが信頼関係はあった。そんな先輩や同期との間に非常に多くの思い出ができたし、10年経った今でも、色々とよく覚えている。
腹の立つことも多かったし、理不尽なことも散々あったが、でも部隊にはどこか温かいものもあった。やっぱりある意味ファミリーだったと思う。

なんて、記憶を美化し過ぎか(笑)。



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