陸士から見た幹部自衛官
「神」への近道
オレは二等陸士で入隊して陸士長で退官したのでもちろん幹部自衛官の経験はない。
でも、このサイトを見ている人の中には将来的に幹部試験を受けて幹部自衛官になりたい人もいるかもしれない。
参考までにオレの視点から見た幹部についてまとめてみた。
まず、下っ端自衛官からすれば幹部は羨ましい事だらけだ。
演習場で飯を食べるとき、陸士は配膳係になる。もちろん片づけもだ。特に新兵の頃は自分が食べる時間はほとんどなくて配膳ばかりだった。
幹部になると、飯は陸士がテントまで持ってきてくれる。30分ぐらいするとまた陸士がやってきて空の食器を持っていく。上げ膳据え膳だ。
演習場に行くときも、陸士は幌付きトラックの荷台で荷物とともに運ばれるが、幹部はジープの補助席に座って悠々と移動。
駐屯地の食堂でも陸士陸曹用の食堂と幹部用の食堂は別。幹部用はいつも空いているので並ばなくていい。ちなみに風呂も別だったりする。
他にも幹部だけのメリットは沢山ある。しかし当然ながら重責を担うことになる。
幹部にも陸曹上がりの古参兵と大卒で幹部候補生学校を卒業したキャリア自衛官がいる。陸曹上がりの幹部は実力と人望を兼ね備えている人が多い。この人達は問題ない。
しかし、キャリア自衛官、特に3尉になりたての新任幹部は一般部隊でかなり苦労するだろう。
はっきり言って、下々の者からすると若手幹部は面白くない存在である。一般社会でもそうだが、地位だけ高くて、仕事のできない人間は下からかなり冷たい目で見られる。しかし、配属されたばかりの経験のない若手がいきなり何でも上手くこなすことは難しい。
また、陸士も陸曹も、ヤンキー上がりの人間が多いので、エリートは元々気に食わないということもあるかもしれない。目の前で批判されることはないが、蔭でかなり言われている。あんな奴の下には付きたくないと。
はじめはやる気満々だった新任3尉もしばらくすると元気がなくなってくる。陸士と違って同期隊員も身近にいないからいつもポツンとしている。オレは大卒で彼らと歳が近かったのでなんとなく気持ちはわかった。
ただし、一人スゴイ若手3尉の小隊長がいて、レンジャー隊員、部下には優しい、しかも男前という、すべて兼ね備えた人で、完全に部下の心を捉えていた。頑張り次第で逆境は克服できるだろう。
しかし、幹部自衛官は出世が早い。30代には3佐で中隊長になれる。このあたりになると貫禄がついてくるので下から馬鹿にされることもなくなってくるだろう。
どこまで出世できるかは実力次第だが、最低でも2佐、大抵は1佐までは行けるようだ。1佐は田舎の駐屯地では神のような存在だ。年収も1千万円を超えてくるし、大成功の人生だろう。
2等兵あがりの自衛官が最終的に1佐まで昇進することは可能であるが、実際は稀である。
もっと言えば、下々の自衛官からすれば3尉という階級にもなかなか届かない。大半は曹長か准尉で定年退職を迎える。それが、幹部コースで入隊した若者だとスタート地点になる。
やっぱり、一生自衛隊にいるつもりで入隊するのなら幹部コースが良いだろう。曹士に比べて待遇が良すぎる。
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